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あと1ヶ月で1年生が終わる。
今はもう学科の授業は終わり、デッサンをしている。
難しくて気が狂いそうになるけど少しだけ楽しい。
昔から油絵に興味あるんだけど、やってみたいなって初めて思ってる。
毎日やっとの思いで通っていたらもう終わりそうなの早いなあ。
普通の道を外れると決めたあの時から、ちゃんと学校に通って長期休みを迎えられたことがなかった。
初めて2回目の長期休みを迎えようとしている。
大変だけど好きなことを学べているのは幸せ。
そういえばこないだ小学校の時の同級生から同窓会のお誘いが来た。
日程的に無理だったから断ったけど、もし行ける日だったらどうしてたんだろうな。
どうせ行かないけど、当日みんなのSNSを見てどんな気持ちになったんだろう。
誘った人はどんな気持ちだったんだろうな。
今でも少し怖い。
大切な人とさようならをした。
恋人だったのは随分前になってしまったし、さようならなんて言う関係でもないのだけど。
高校1年生の時、わたしはひとりぼっちなんだと思ってた。
苦しくてたまらなくて毎日死にたいって泣き叫んでいた。
もう本当にどうでもいいやと何度も思ったし、その度に彼は夜中でも自転車で1時間の距離をかけつけてくれて、明るくなるまで隣にいてくれた。
彼がいなかったらなかった今だったと思う。
地元を離れて、彼と同じ最寄りに住み始め、彼が恋人になった。
それから色々あって、終わって、それから1年近く引きずっていた。
こないだ自分の作品を展示して、それをあの子が見に来てくれて気持ちが消化できたと言ってくれた。ありがとうと伝えられたし、別のあの子にはごめんねを言えた。
やっと終われた。
どんな時でもかけつけてくれるヒーローみたいな彼だった。
そんな優しいところが好きだった。
目が合って笑ったら照れたように笑いながら頭をかくとこが好きだった。
お酒を飲んだらすぐ真っ赤になるとこが好きだった。
たばこはやめてねって言うくせに自分はめちゃくちゃに吸ってた。
地元ではいつも駅前のドトールの喫煙席だった。
上京してからは近くのコメダになった。
彼のバイクの後ろに乗るのが好きだった。
時々作ってくれる料理がすっごく美味しかった。
いつもわたしのカメラを奪ってわたしの写真を撮っていた。
撮ったら俺ぶすだからって嫌がってた。
たまに付き合ってくれる夜中のお散歩が好きだった。
すき家のメガ盛りチーズ牛丼か、スーパーの激辛ラーメンを買って食べていた。
夜中のチーズ牛丼は美味しかった。
激辛ラーメンはお腹すいて食べちゃうんだけどからいからいって騒いでたら奪われてた。
いつも腕枕をして頭を撫でてくれてた。
いつも映画の途中で寝ちゃうわたしに怒ってた。
いつもは何するのも面倒くさがるのに大事な時は付き合ってくれた。
出会った時からずっと彼の作る音楽が好きだった。
彼の音楽にも救われてきた。
ずっと彼に認められたいと思って生きてきた。
入試のポートフォリオを見て初めて認めてくれた。
合格したよって言ったら泣いておめでとうって言ってくれた。
他にもたくさん思い出がある。
長かった。
おわり。